20歳と38度線

とある大学生の日常とエッセイ。ソウル大学交換留学、彼氏は韓国陸軍軍人。K-popと政治問題だけでは語れない朝鮮半島を書いています。

みん会第3回活動報告〜ナヌムの家〜

 現在、私はソウルで植民地時代を考える「みんなで行ってみよう会」(略してみん会)という活動を行なっています。植民地の記憶の場所に日韓学生で足を運び、感想を共有します。

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 第3回目の今回は、京畿道光州市にあるナヌムの家に行ってきました。ソウルのカンナム駅から電車とタクシーを利用して一時間半ほどの所にあります。ナヌムの家は、慰安婦被害者女性が共同生活をする施設であり、現在6人のハルモニ(韓国語でおばあさんの意)が暮らしています。ナヌムの家の隣には日本軍「慰安婦」歴史館があり、日本軍「慰安婦」の実態について知ることができます。日本語の解説が展示のほぼ全てについていますし、予約をすれば日本語で解説をしてもらうこともできます。(※写真撮影は特別に許可をいただきました)

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ナヌムの家広場 ハルモニたちの胸像
 日韓を語るときに必ずと言っていいほど話題に上がる「慰安婦」問題ですが、実際のところ何が“問題”なのかを正確に把握している人は、韓国人にも在韓日本人にもそれほど多くないのが現状です。私たちは、今回ナヌムの家を訪れ、慰安婦のハルモニたちのドキュメンタリー映像を見た後、歴史館で解説を聴きながら展示を見学しました。移動する途中で、偶然広場で姜日出ハルモニに会って少し話も聞きました。帰り道に、本当に来てよかったと皆が口を揃えて言っていました。私自身も韓国にいる間に、足を運べて本当によかったと思います。
 
見学後に毎回行なっている感想共有のコメントを、抜粋して以下にまとめました。

 

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日本人Aさん
 まず、前半は一人一人感想を共有して、後半はフリートークです。後半では、前半を聞いてて思いついた質問とか、思い出したこととかを話していきます。とってもゆる~いので、「自分の考えは違った」っていうのも、普通に言ってもいいですよ。あと、討論じゃないので「それは間違ってる!」とは誰も言わないので心配しないでください。「思ったことが正解」という感じて、やっていきます笑 
 
 私は、日本で慰安婦の授業を一回取って、戦争と女性の人権博物館(通称、慰安婦博物館)も2回くらい行きました。授業は単位だから適当に聞いてたし、博物館もそんなに韓国語ができないときに行ったから、全部の展示は読めなかったです。日本語のあるところだけパパっと読む感じでした。韓国語勉強してからもう3、4年経ってるけど、もともと私は慰安婦にそこまで興味を持てなかったんです。なんか、日韓交流会とか行くとめっちゃ慰安婦の話出るじゃないですか。「K-pop好きでしょ」って言われて、私は「どっちかっていうと現代史の方が好きです」ってタイプの人間だったから「じゃあ、慰安婦どう思うの?」って言われますよね笑。そういう時は「いろんな考え方があると思います」って逃げるコメントをずっとしてきました。でも、授業とか博物館とか行って、日本軍がひどいことをしたことは理解してたつもりです。ただ、なんでそこまでしておばあさんたちは主張を続けるんだろうかっていうのがずっとひっかかってて。河野談話も知ってたから「謝罪してんじゃん」っていう意見も分かってました。ナヌムの家に来るまで、日本とハルモニ、どちらの主張もわかる気がするという感じでした。そして、今回、どうしてハルモニたちがここまで主張し続けて、何を求めていたのか、具体的に日本はどうすればいいのかという答えが、分かったような気がしました。「誠意ある謝罪っていうけど、何それ」ってずっと思ってました。でも、実際ちゃんと7つ(要求が)あった。7つ日本政府が実行してるかっていうと、してない。7つを見てみたら、確かに全部必要なことだと私も思った。そこが1番納得できた回でした。

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慰安所の利用料金表


 韓国人Bさん
 日韓関係って言うと思い浮かぶのは、慰安婦竹島・独島、あとは戦後処理があって。日韓問題の一部として具体的に見てみたいなーと思って今回参加しました。今までも、日本軍慰安婦が実は性奴隷で辛い経験をしたっていうのは聞いてたんだけど。いろんな展示を見て、ハルモニの個人個人の遺品とか絵とかストーリーを聞いて、帰国後も1人の女性としての尊厳や家族を作る機会も奪われて、新しい人生を構築するタイミングも奪われていたことを知りました。慰安婦という事実だけではないな、今でも持続的につながる問題だなと、改めて痛感しました。慰安婦問題で日本政府が言い訳できた理由も、昔は韓国は国自体の立場も弱かったし、公文書の調査の実力とか韓国にも欠けてた部分があったからだと思います。でも、今、WTOの訴訟で韓国が勝ったように、韓国も外交力の面でも力はついてきてるから、慰安婦問題の解決の力に少しでもなればなと個人的に思っています

 

日本人Cさん
 この前、英会話の時に日韓関係の話が出て、その時に日本人の中年のおばさんが「日本は謝ってるのに、なんで(韓国が)言ってくるのかわかんない」って言ってました。その時、私も反論できる材料を持ってなくて。その時のモヤモヤしてたものが今日ここに来て、なんとなく分かって良かったです。ハルモニ個人個人の説明を見て、最近亡くなってる人が多かったので、早く解決しなきゃなと思いました。あと、アイドルが慰安婦ハルモニのブレスレットを身につけていたのを日本人が見つけて「反日アイドルだ」って言ってるのを見たことがあるんですけど。ブレスレットをしているからといって、全然反日とは関係がないなあと今回思いました。
 

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ハルモニたちの個人のストーリーと遺品
 韓国人Dさん
 一応、慰安婦問題があったってことは知ってたんですけど、今回見学して、もっと詳しく知れてよかったと思います。韓国の歴史教科書にあるハルモニの絵、手を掴まれて日本に連れて行かれる絵を実際に見ることができて、いい経験になりました。学校の日本人との交流会での話なんですが、日本人の学生が慰安婦問題について発表したことがあるんですよ。その時に、河野談話村山談話、安倍談話を述べて、「実際に日本は慰安婦問題について謝った。韓国人が未だに日本が謝罪していないのは間違い」というふうに説明をしてました。その時、僕も「そうなんだ、日本側は謝罪したんだ」って思って、「韓国側はまだに認めてないんだな」って思いました。実は、今学期学校で慰安婦について授業を聞いているですが。今学期と今日でそれは真の意味での謝罪じゃないことを知って、まだまだ慰安婦問題について誤解が多いんだなと思いました。その誤解を解くために、多くの人たちに正確に問題について知らせるのが大事だと思いました。最後に、実際に多くの人たちが慰安婦問題の訴えに参加するのがいいんですが、それは現実的に不可能なので、せめて問題について正確に知って、それを覚えていることがハルモニたちへの最小限の礼儀ではないかと思いました。 

 

 もともと、私は慰安婦についてちゃんと考えたことはなかったです。慰安婦ががあったっていうことだけ知っていて。慰安婦をもっと知らなきゃいけないなって漠然と思っていて、今回参加しました。日本にいる時に、何回もニュースで「日本は謝ったのに韓国はなんか言ってる」とかSNSネトウヨの人たちとか若い人たち、全く知識がない人たちが、メディアの情報を鵜呑みにして「首相とかが謝ったのにまだ韓国は言ってるんだ」って言うのを見てました。「日本は別に悪ことしてないし、朝鮮の人たちも承諾してた」っていうのは、事実として間違っているのに(事実と)認識している人がいるのも知ってました。でも、私はそれは正しくないっていうのはわかってました。なんで分かっているかというと、私の母親がそういうこと若干知ってるんですよ。家でそうニュースが流れると、「そんなことは嘘だ」とか、「そんなことはしてない」とか言うんです。でも、「じゃあ、なんで?」って聞くと親も漠然とした感じで「日本が間違ってる」としか言わないんですよね。私の中では、「間違っているのはなぜか」っていうところが分かっていませんでした。でも今回、説明もたくさんしてもらいながら、いろんな展示物を見て。本当にこんな悲惨なことがあったんだということを身に染みて感じました。重さを感じたというか。慰安婦っていう言い方が本当に間違っていると思ったし。日本軍性奴隷という状態の制度ができていたことをようやく理解することができたと思います。それと、最初は(慰安婦問題は)日韓の問題だと思ってたんですけど、アジアとか台湾とか他の国々でも、性奴隷として女性を扱って日本軍が連れていったという話を聞いて、これは日韓だけの問題じゃないんだと思いました。日本人はもちろん、日本が「韓国の慰安婦」と問題化してるからその意識しかないけど、本当は日韓のことではなくて、日本対他国の政府でもなくて、日本対被害女性っていう考え方をしないといけないことを今日理解できました。本当に勉強になる時間でした。 
 

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慰霊の場所にて
****フリートーク****
 (中略)
Aさん:慰安婦問題って複雑に絡み合いすぎていて、解決ってすごい難しいなと思っています。今まで、慰安婦問題は女性の人権の問題と戦後処理の問題なのかなって思ったんですけど、今日話を聞きながらこれは天皇制の問題でもあるなって、新しい視点を得られました。戦後、天皇を処罰しないほうがいいと判断したのがGHQで、まだ日本に天皇制が残っている。年号改定で今回、天皇が日本人に愛されてるっていうのが分かったじゃないですか。本当に国民から愛されていて、無くてはならない存在なんだなって実感しました。じゃあ、そういう人を、そういう存在をどう処罰するのかっていうのは、日本人の問題であるなとすごい感じました。
 
Bさん:(展示の中で)慰安婦天皇からの贈り物だってやつ、めっちゃ衝撃だった。
 
Eさん:それね。
 
A さん:あと、軍人たちが集まってノスタルジックに慰安婦を語るっていうのは、ちょっとえ……。って思った。
 
(中略)

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姜日出ハルモニと記念撮影
Aさん:今日、おばあちゃんに会って私はすごい衝撃でした。認知症入ってるって言ってたのに、日本人と聞いたら日本の賠償のことをまず言うっていうのは、それほど深く心に刻まれてしまっているのかなって、私は解釈しました。
 
Cさん:私はなんか、どんな顔をして会えばいいのか、分からなかった。ちょっと困惑というか。
 
Dさん:僕は、実際のおばあちゃんに会ってから、慰安婦問題って遠い問題じゃなくて身近な問題なんだなっていうのを感じました。認知症なのに、「日本は賠償しなければならない」「日本は謝罪しなければならない」とずっと繰り返しておっしゃっているのが僕もちょっと驚きで。今の世代が見逃しちゃいけない問題なんだなって思いました。
 
(中略)

 

Bさん:韓国の教科書では慰安婦のことどれくらい載ってますか?
 
Dさん:いまは、金学順ハルモニの名前も出てるし、金学順ハルモニがきっかけでいろんな問題が知られるようになったっていうのも高校の歴史教科書には載ってました。先生によっては慰安婦問題について1時間ずっと話してる先生もいらっしゃったりして。日本は慰安婦に関してどののように歴史教育を行なっているんですか?
 
Aさん: 歴史教育を行ってません笑
 
Dさん:ええ!
 
Bさん:慰安婦という言葉自体も(教科書には)無いし。一旦、第二次世界大戦についての部分もかなり省略されてて。(中略)創氏改名は、一応教わるんですけど、慰安婦はない。
 
Cさん:神社強制参拝は教える。
 
Dさん:自分の感覚では、朝鮮時代までの歴史と近現代史の歴史が五分五分で歴史教科書に載っているので、植民地時代の歴史は細かく学びます。神社に参拝している写真も載っているし、国語で創氏改名に関する文学作品とかも学ぶんですよ。(中略)日本と韓国の近現代史に対しての教育の差があるなとは思ってたんですが、これほど差があるとは思ってませんでした笑
 

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慰安所が再現された部屋の入り口
Bさん:しかも、日本史自体が高校では選択で、必須じゃないんですよ。その面もかなり大きいなと思います。
 
Aさん:韓国では、韓国史は必須ですか?
 
Dさん:韓国史は必須です。大学に入る試験の必須科目なので。でも、必須だからと言っても、問題が『ハングルを作った人は誰?』っていうレベルなので易しすぎます。でも一応必須ですね。韓国はやっぱり、近現代史について、特に植民地時代については本当に細かに学生たちに教えてるなーっと大学に通いながら思うようになりました。(中略)
 
Cさん:日本は、近現代史が最後の方にあるから、ダッシュで終わるっていうのも(あります)。
 
Dさん:韓国では、独立運動家の名前や所属まで覚えなきゃならないので。10年代に日本はどんな政策を行なって、20年代に日本はどんな政策を行なって、30〜40年代に日本はどんな政策を行なって、どういう影響をもたらして、今はそれがどう残っているのというのを詳細に教えてます笑。
 
 
Bさん:前、ソウル大学東京大学で日韓学生交流とかやってたんですよ。いろんなテーマに基づいて討論とかするんです。そこで思ったのが、まず討論が成り立たないということ。まず、東大側が知らなさすぎて。韓国側の方がより日本のことを知ってて、「なんで?」って東大側に聞いても、「知らない」で終わることが多くて。「あ、これはまず意見があるというよりは知るから始まるのか」と切実に思った。私自身も知らないことが多いなっていうのもそのとき気づきました。

 

 
(中略)
Aさん:ネトウヨって、ネット人口の数パーセントもいないのに、活動がすごい活発だから、あたかも半数を占めるような印象を与えることができる集合体なんですよね。それが話題になるからってそれを取り上げるメディアもメディアだと思うし。そしたらもう、言ったもん勝ちになっちゃうよね。でも、例えば「慰安婦問題は無かった」っていう記事を見て、どれくらいの人が本当なんだろうかって調べるかっていうとほとんど調べないし。言ったもん勝ちの世界になっちゃうのがすごい怖い。
 
Bさん:どう解決するっかていうのがさ……
 
Aさん:難しいんだよね。
 
E さん:片寄った見方をしている人は、韓国の人たちがちゃんと歴史の勉強をしてるのを反日教育だという人もいるじゃないですか。正しい歴史を知ることを、反日という思想にしてしまう感覚がよくないと私は思います。そういう感覚を持たずに、正しい歴史の勉強をできるようにしないといけないなと思いました。

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 今回は本当に気付きが多い1日だったようで、感想共有の時は、予定時間を大幅に超えて話こんでしまいました。この他にも、人権の話や国家について、朝鮮人差別などいろんな方向に話が広がりました。
 私は、日韓問題の代名詞だからこそ、「慰安婦」問題について日韓学生がラフな形で意見交換ができる場があればいいなとずっと思ってきました。日韓学生の知識量の差と歴史認識の差が大きな壁となっていましたが、博物館見学を通してその2つを共有することで壁をクリアできました。対立する討論という形ではなく、考えを共有し他者を認め合う形での語り合う場をささやかながら今回つくることができたと思っています。
 
「また友達連れて来ますね。」
みんなから自然と出てきた解説員の方への言葉の輪が、ずっと続くことを願って。

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日本語でのメッセージ